ここでは、まずクラシックギターの上向スラー(ハンマリング・オン)の弾き方について学び、練習していきましょう。
ぜひこのページを最後までやって、上向スラーの基本を習得して下さい。
スラー(英語:slur)とは、
- 音と音を滑らかにつなぐという音楽表現上の意味と
- 技術的な奏法の指示
の二種類があります。
ギターでは、❷技術的な奏法の指示として用いられます。
ギターの楽譜では、音楽表現としてのスラーは基本的に書きません。
クラシックギターの場合
- 音が高い方へスラーする場合は、左手で弦を叩いて音を出します。
これを上向スラー(上行スラーとも書く)といいます。 - 音が低い方へスラーする場合は、左手で弦を弾いて音を出します。
これを下向スラー(下行スラーとも書く)といいます。
実際には、上向スラーも下向スラーも区別せず、ただスラーとだけいうことが多いです。
エレキ・アコギの場合
- 上向スラーのことは、ハンマリング・オン(hammering on)といいます。
- 下向スラーのことは、プリング・オフ(pulling off)といいます。
個人的には、こちらの言い方の方が、イメージがつかみやすいと思います。
このスラーを用いたギターの曲では、以下のような曲が有名です。
- 魔笛の主題による変奏曲(Op. 9) – F. ソル 作曲
- アンダンテ・ラルゴ (Op. 5-5) – F. ソル 作曲
- グラン・ホタ – F. タレガ 作曲
それでは、実際に弾いてみましょう。
以下、私が作ったエクササイズに沿って、説明していきます。
譜例1 – 上向スラー(高音弦)
- 高音弦は、imの指で弾きます。
- 1の指から3の指へスラーをする時(ドからレにスラーする時)には、1の指を弦から放さないこと。
理由は、音が途切れるからと、左手が不安定になる(ミスタッチが増える)からです。
- フレットのキワを狙って、弦に対して垂直に打弦すること。
- 弦は指頭で叩くこと。(指の腹で叩いてもきちんと音が出ません)
- それでも音が出ない場合は、打弦時の初速度が遅いことが原因です。
初速度とは、物体が運動し始めた瞬間の速度のことです。
(例文)
富士急ハイランドには、発射1秒で時速180kmに達するという、驚異の初速度を誇るドドンパというジェットコースターがある。
それでは次に、上向スラー時にやってはいけない弾き方を2つ挙げます。
こうならないように注意しましょう。
腕を振る
腕(または手首)を振ってはいけない理由は、
- 着地点が定まらず、ミスタッチが増える
- 指がバタバタして、衝撃でギターもガクガク揺れる
- 弾けない曲が出てくる
等々、実用的でない要素が多いです。
指を振りかぶる
大きい音を出そうとするあまり、指を大きく振りかぶってしまうと、上記の腕を振った時と同じ問題が生じるため、実用的ではありません。
指を上げるのは、実際には弦から2cmまでで十分です。
それ以上上げようとすると、指が根元の関節から逆そりし始めて、スラーには必要のない別の動きが入ってくるので、止めましょう。
2cm以内でも、初速が速ければ問題なく発音できます。
続いて、低音弦でも練習してみましょう。
譜例2 – 上向スラー(低音弦)
- 低音弦は、pの指で弾きます。
- スラーする時に元々押さえていた指は、そのまま弦から放さないこと。
理由は、音が途切れるからと、左手が不安定になる(ミスタッチが増える)からです。
- フレットのキワを狙って、弦に対して垂直に打弦すること。
- 弦は指頭で叩くこと。(特に4の指)
- それでも音が出ない場合は、打弦時の初速度が遅いことが原因です。
高音弦の時と同じで、
- 腕(手首)を振らない
- 2cm以上指を振りかぶらない
この2点に注意しましょう。
準備編・上向スラー(ハンマリング・オン)の解説は、これで終わりです。
上向スラーをキレイに出す上で大事なことは、
- 腕を動かさない(指の根元の関節からの動きだけを使う)
- 2cm以上振りかぶらない
- フレットのキワを指頭で叩く
- 軸になる指は放さず、置いておく
等、色々と解説してきました。
これらのことは、とても大事なポイントです。
ただ私は、スラーで音が出ない人の最大の原因は、打弦時の初速度にあると思っています。
次は、【基礎技術】スラー② – 準備編(下向スラー)へ進みます。
次の下向スラーは、今回の上向スラーとは異なるテクニックですので、
まずはこの上向スラーをしっかりとマスターしてから、次の下向スラーへ進みましょう。